コラム

子どもが歯医者を嫌がる理由は?~子どものペースで治療を進める歯医者さん~

歯医者の予約が近づくと、少し元気がなくなったり、当日になると行きたがらなくなったりするお子さんに、戸惑った経験をお持ちの保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

子どもが歯医者を嫌がる理由は、単に「痛みが怖いから」という一言では語りきれません。
歯医者という環境そのもの、音や器具、知らない人との距離感、先が見えないことへの不安など、複数の要素が重なって気持ちが揺れやすくなります。

 

当院は、「お子さんのペースで治療を進める歯医者」です。

 

このコラムでは、子どもが歯医者を嫌がりやすい理由と、歯医者でできること、ご家庭でできることをお伝えします。

 

そして小児歯科での定期検診が、お子さんのサポートになることについてもご紹介します。

 

【河野歯科医院】院長 河野雅人

河野雅人 院長

1989年 日本大学歯学部 卒業
その後、都内の歯科医院にて勤務
1996年 河野歯科医院 開院

医院名:河野歯科医院
所在地: 〒307-0001
茨城県結城市結城1572

 

 

子どもが歯医者を嫌がる理由は不安がいくつも重なるから

最初に押さえておきたいのは、子どもの「嫌だ」という反応は、性格やわがままだけで説明できるものではないという点です。
子どもは大人のように、これから起こることを落ち着いて整理したり、先の見通しを立てたりすることがまだ得意ではありません。
そのため、「何をされるのかわからない」「どれくらい続くのかわからない」といった状況そのものが、不安や恐怖につながりやすくなります。

 

歯医者では、イスに座って背もたれを倒す、口を開け続ける、顔の近くに器具が来る、知らない人が近づくといった、日常ではあまり起こらない体験が重なります。
この「慣れないことの連続」が、子どもの心と身体を緊張させるきっかけになってしまうのです。

 

 

子どもが歯医者で不安を感じやすい場面

子どもの歯科受診に対する不安について、日本小児歯科学会誌にも掲載された研究があります。
この研究では、子どもを対象にアンケート調査を行い、歯科受診のどのような場面で不安が生じやすいのかを調べています。
調査には、米国、シンガポール、スウェーデン、フィンランド、オランダなどの諸外国で子どもの歯科恐怖に関する研究で応用されているCFSS-DS(Children’s Fear Survey Schedule-Dental Subscale)という国際的にも認知度が高いアンケート調査の方法が用いられました。

 

研究結果からは、子どもの不安がいくつかの場面にわかれて現れやすいことが示されました。
これを知っておくと、子どもの反応が気合い不足や性格の問題ではなく、「不安に対する自然な反応」として捉えやすくなります。


参照:J-STAGE|小児歯科学雑誌43巻(2005)2号「小児の歯科恐怖に関する研究―保育園児における実態調査―」 >

 

歯医者や病院に行くこと自体への不安

研究では、「病院に行かなければならないこと」「歯医者さんの雰囲気」「お口の中を診られること」「白衣を着た人」などが、不安を感じやすい原因として挙げられています。
これらは歯科に限らず、医科の受診とも共通する場面です。
つまり、治療が始まる前の段階から、すでに緊張が高まる子どもがいることがわかります。

 

歯科治療特有の刺激への不安

研究では、「歯を削る音」「歯を削っているのを見ること」「歯を削られること」「お口の中に器具を入れられること」「息がつまること」などが示されています。
ここで大切なのは、痛みの有無とは別に、音や見た目、お口の中の感覚そのものが不安のきっかけになり得る点です。
大人にとっては短時間で終わる処置でも、子どもにとっては刺激が強く感じられる場合があります。

 

知らない人との距離や触れられることへの不安

研究では、「誰かに見られること」「知らない人に触れられること」といった内容も含まれています。
歯科では顔の近くで処置が行われるため、距離が近いこと自体が緊張につながることがあります。
子どもが言葉にできない不安は、身体のこわばりや、口が開かない、涙が出るといった形で表に出ることもあります。

 

 

ここからわかるのは、「痛み」だけが理由ではないということです

研究で示されているとおり、子どもが歯医者を嫌がる背景には、治療内容以外の要素も関係します。
環境への緊張、刺激への反応、先が見えない不安、知らない人との距離感などが重なると、子どもは「怖い」と感じやすくなります。
だからこそ、歯科受診では「早く終わらせる」よりも、「子どもが受け入れられる範囲を見極める」ことがポイントです。
「子どものペースで治療を進める」ことが大切になります。

 

 

「子どものペースで治療を進める」とは?

子どものペースで治療を進めるとは、治療を先延ばしにすることではありません。
子どもが状況を理解し、安心して協力できる状態を整えながら、段階を踏んで進める考え方です。
目標は「その日だけ治療を成立させること」ではなく、「これからも通える関係をつくること」です。

 

歯医者でよく行われる、段階的な進め方

子どもの不安の多くは、「知らないこと」から大きくなりやすい傾向があります。
そのため歯医者では、次のように段階を分けて進める方法がよく取られます。

▪今日は何をするかを短く伝える
▪器具を見せる、音を聞かせるなど、これから何をするのかの予告をする
▪口を開ける練習から始め、一つ一つを短い時間で区切る
▪途中で休憩をはさみ、息を整える時間をつくる
▪できたことを確認し、「次もここから」と見通しを持てるようにする

お子さんが「できた」という経験を積み重ねるほど、歯医者への不安は小さくなりやすいのです。

 

子どもが安心しやすい、声かけと合図の工夫

子どもは、身体の感覚を自分でコントロールするのが難しい特徴があります。
そのため「つらくなったらやめられる」という感覚があるだけで、落ち着きやすくなる場合があります。
たとえば、

▪手を挙げたら一度とまる
▪今からどれくらいがんばるかを先に伝える
▪「お口を休憩しよう」と休み休み行う

などです。こうした合図の約束は、子どもにとって「自分にも主導権がある」と感じられ、心の支えになります。

 

「今日はここまで」という区切りが、次の受診につながります

子どもの様子によっては、その日に治療まで進まないこともあります。
しかし、イスに座れた、口を開けられた、器具を見られたといった経験自体が、次につながる土台になります。
歯医者が「怖い場所」から「通える場所」へ変わるには、こうした小さな成功体験の積み重ねが大切になります。

 

 

「ご家庭でできること」とは?

歯医者での工夫に加えて、ご家庭での関わり方も、子どもの気持ちに影響します。
ここでは、特別なことではなく、日常の中で取り入れやすいポイントをまとめます。

 

受診前の声かけは「事実を短く」が基本です

「痛くないよ」「すぐ終わるよ」と言い切りたくなる場面はあります。
ただ、子どもによっては「痛いかもしれないのに?」という疑いにつながり、かえって不安が増すこともあります。
おすすめは、事実を落ち着いて伝えることです。

「お口の中を見てもらうよ」
「歯を元気にする相談をするよ」
「先生がみて、どうするか決めるよ」

こうした言い方は、子どもにとって状況を受け止めやすくなります。

 

嫌がったときは、まず気持ちを言葉にして受け止めます

「怖い」「行きたくない」と言われたとき、保護者の方もあせりが出ることがあります。
そのときに「大丈夫」「みんなできる」と返したくなるのは自然です。
ただ、子どもは「わかってもらえない」と感じると、さらに強く拒否することもあります。

「怖いんだね」
「いやな気持ちになったんだね」
「初めての場所は緊張するよね」

こうした受け止めがあると、子どもは落ち着きやすくなります。
その上で、「先生と一緒に少しずつやってみよう」と伝える流れが、受診への一歩を支えます。

 

受診前に話しすぎないことも、子どもには有効です

歯医者の話題を長く続けるほど、不安がふくらむ子どももいます。
音や器具が苦手なタイプのお子さんでは、具体的に説明しすぎることで想像が広がり、前日から緊張することもあります。
お子さんの反応を見ながら、必要な範囲で短く伝えることがポイントです。

 

 

定期検診は、むし歯を防ぐだけでなく、歯医者に慣れるための通院でもあります

子どもの歯は、大人の歯と比べてエナメル質や象牙質が薄く、むし歯が進行しやすい特徴があります。
見た目には小さな変化でも、内部では進行していることがあり、気づいたときには治療が必要な状態になっている場合もあるのです。

 

また、年齢によっては痛みや違和感をうまく言葉にできず、日常の様子だけではむし歯の有無を判断しにくいこともあります。

 

そのため大切になるのが、痛みが出てから受診するのではなく、定期的に歯の状態を確認する「予防」と「定期検診」です。
定期検診では、むし歯のチェックだけでなく、歯磨きの確認やクリーニングなど、治療を目的としないケアが中心になります。
こうした予防のための受診を重ねることで、子どもは歯医者の雰囲気や流れに少しずつ慣れていきやすくなるでしょう。

 

その結果、「痛くなってから急に行く場所」ではなく、「歯を守るために通う場所」として歯医者を受け止められるようになることがあります。

 

定期検診を通じて予防を続けることは、むし歯の進行を防ぐだけでなく、将来的に治療が必要になる場面を減らし、子どもが無理なく通院できる環境をつくることにもつながります。

 

 

当院では、お子さんのペースを大切にしながら無理のない診療を行います

当院では、お子さんお一人お一人のペースを丁寧に見極め、無理のない方法で進めていくことを大切にしています。

 

子どもが歯医者を嫌がるときほど、あせらず、その気持ちを受け止めながら進めていくことが大切です。

 

「今日はここまで」と区切りながら経験を積み重ねていくことで、歯医者に対する緊張が少しずつ和らぎ、次の受診につながりやすくなることもあります。

 

また、むし歯ができる前から予防のために定期検診を受けることは、歯医者の雰囲気に慣れる機会にもなるのでおすすめです。

 

治療を目的としない通院を重ねることは、「痛くなってから行く場所」ではなく「日ごろから通う場所」として受け止められるきっかけになります。

 

歯医者と保護者の方が一緒になって、お子さんのペースを尊重しながら向き合っていくことで、お子さんの将来にわたるお口の健康につなげていきましょう。


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